コンピュータ審査は、いつ・どう入るのか

不安をあおられる前に、時期を正確に置きます。療養費のコンピュータ審査は、柔道整復療養費のオンライン請求の導入に合わせて入ります。中間とりまとめでは、オンライン請求の導入に伴い、療養費審査にコンピュータチェックを導入することが適当だとされています。つまり、紙の請求がオンラインに変わる動きと、審査の機械化は、同じ流れの中にあります。

ただし、開始時期は決まっていません。オンライン請求そのものの稼働時期が未定で、当初の令和8年度の稼働目標は見直され、新しい時期はこれから議論されます。慌てて何かを買う場面ではなく、点検の中身を先に知って、請求を整える時間がある段階だ、と押さえておきます。

何が点検されるのか

備えの中心は、ここです。中間とりまとめでは、コンピュータチェックの中身として、形式審査と内容審査に加え、電子データの紐付けによる縦覧・横覧点検や突合点検を導入するとされています。点検の種類を分けて見ます。

点検の種類見るところ
形式審査記載漏れや形式の誤りがないか
内容審査負傷名・部位・回数などの中身が適切か
縦覧点検同じ患者の請求を時系列でつないで見る
横覧点検複数の施術所をまたいで同じ患者の請求を見る
突合点検他の制度の給付などと突き合わせる

出典: 厚生労働省「柔道整復療養費のオンライン請求導入等について(中間とりまとめ)」令和7年3月12日(2026年6月5日確認)。

あわせて、不適切な多部位への施術や長期・頻回の施術に関する審査、施術所単位の傾向審査、他の制度の給付などとの併給審査を実施するとされています。1枚の申請書を見て終わりではなく、データをつないで重なりや偏りを探す、という点検です。これまで人の目で抜き取っていた確認が、機械で広く回るようになります。

今の保険者審査と何が変わるか

今との違いを押さえると、変化の意味が見えます。現在の柔道整復の審査は、国保連や協会けんぽに置かれた療養費審査委員会(全国94か所)と、個々の保険者による審査で行われています。全国でそろった審査基準が確立されておらず、保険者ごとに結果に差が出ている場合がある、と中間とりまとめは指摘しています。

オンライン請求の導入後は、ここに二つの変化が加わります。全国で標準的な審査基準を作ること、そして審査結果のデータを共有し、機械の点検の精度を上げて、保険者ごとの不合理な差を減らすことです。地域や保険者によって甘い・厳しいがあった状態から、全国で同じものさしに近づく、という方向です。どこで請求しても見られ方が近づく、と読んでおきます。

「施術所単位の傾向審査」が新しい

備えるうえで見落とせないのが、傾向審査です。これまでの不安は「この患者の、この請求が止められないか」という1件単位のものでした。傾向審査は、患者1人ではなく、その施術所の請求全体の偏りを見ます。

1件ずつは目立たなくても、ならすと浮かぶ ほとんどの患者が2部位以上になっている、長期・頻回の割合が際立って高い、といった施術所ごとの傾向が対象になります。1件だけ見れば通る請求でも、施術所単位でならすと偏りが見えます。自分の院の請求が、全体としてどんな形をしているかを、一度引いて眺めておきます。

改定案でも、請求のほとんどが2部位以上であるような施術所について、実態を把握する方針が示されています。傾向で見られるということは、個々の申請書を直すだけでなく、自院の請求のかたちそのものを実態に合わせておく必要がある、ということです。

機械化されても消えないもの

機械が判断するなら反論できない、と身構える必要はありません。中間とりまとめでは、コンピュータチェックによる審査を行うにあたって、機械的な運用を行わないようにすべきだという意見が示されています。療養費審査委員会との役割分担や、具体的な審査の方法を検討すべきだ、ともされています。

不服がある場合の道も残ります。オンライン請求の導入後は、審査結果に不服があれば、オンライン請求システム上で再審査を申し出られる仕組みを整えるとされています。機械が広く点検し、最終的な判断には人が関わり、不服には再審査で応える。この組み合わせを前提に、整えておくべきは「実態を示せる請求」だと分かります。

請求の中身をどう備えるか

点検の中身が分かれば、備えははっきりします。縦覧・横覧・突合に耐える請求とは、実態が記録で示せる請求のことです。

今から整える

  • 負傷名と、実際に施術した部位をそろえる。申請書と現場の食い違いをなくす。
  • 施術録に、負傷の原因・部位・経過を残し、長期・頻回には続ける理由を書いておく。
  • 多部位や付け替えの請求を見直し、根拠のない部位を保険に乗せない。
  • 慢性の肩こり・腰痛や疲労へのケアは、保険から外して自費に切り分ける。

引いて眺める

  • 自院の請求の傾向(2部位以上の割合、長期・頻回の割合)を一度数える。
  • 同じ患者が他の施術所や他制度でも給付を受けていないか、思い当たる重なりを確かめる。

コンピュータ審査は、請求を新しく禁じる仕組みではありません。これまで人の目では追いきれなかった重なりや偏りを、データのつながりで見えるようにする仕組みです。裏を返せば、実態のある負傷を、記録とともに請求していれば、機械化されても止められる理由はありません。1件ずつの正しさに加えて、自院の請求のかたちを実態に合わせておく。これが、コンピュータ審査への備えです。

よくある質問

コンピュータ審査はいつから始まりますか?
オンライン請求の導入に合わせて入りますが、その稼働時期が未定のため、開始時期も決まっていません。当初の令和8年度目標は見直され、新しい時期はこれから議論されます。
縦覧・横覧・突合とは何ですか?
縦覧点検は同じ患者の請求を時系列で見る点検、横覧点検は複数の施術所をまたいで見る点検、突合点検は他制度の給付などと突き合わせる点検です。1枚の申請書では見えない重なりが、データのつながりで見えます。
施術所単位で見られると、何が変わりますか?
患者1人ごとでなく、施術所の請求全体の偏りが対象になります。2部位以上や長期・頻回の割合が際立って高いといった傾向が見られるため、個々の申請書だけでなく、自院の請求のかたちを実態に合わせておく必要があります。
機械がすべて自動で判断するのですか?
そうではありません。機械的な運用を行わないようにすべきだという意見や、療養費審査委員会との役割分担の検討が示されています。不服があれば、オンライン請求システム上で再審査を申し出る仕組みも整えるとされています。
今から何をしておけばいいですか?
負傷名と部位をそろえ、施術録に根拠を残し、多部位や付け替えを見直します。慢性のケアは自費に切り分けます。あわせて、自院の2部位以上や長期・頻回の割合を一度数えておきます。

出典

SOURCES | 一次情報
  1. 厚生労働省「柔道整復療養費のオンライン請求導入等について(中間とりまとめ)」令和7年3月12日 mhlw.go.jp/content/12601000/001467878.pdf (2026年6月5日確認)
  2. 厚生労働省「いわゆる『部位転がし』に関する調査について」(第35回 柔道整復療養費検討専門委員会 令和8年4月30日 資料) mhlw.go.jp/content/12404000/001696853.pdf (2026年6月5日確認)

本記事は検討段階の中間とりまとめをまとめたものです。コンピュータ審査の具体的な内容や開始時期は、今後の議論と告示・通知で決まります。請求実務の判断は、必ず厚生労働省の最新の発表と、所属団体・保険者の案内で再確認してください。

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