オンライン請求は、そもそも何が変わる話なのか
今の柔道整復療養費は、紙の支給申請書を保険者ごとに仕分けして請求するのが基本です。この紙のやりとりを、インターネット経由のオンライン請求に切り替えよう、というのがこの話の中身です。出発点は国の規制改革で、「柔道整復療養費を原則としてオンライン請求にする」という方針が令和4年と令和5年の閣議決定で示されました。
切り替えの目的は4つに整理されています。施術所への確実な支払いと請求代行業者による不正の防止、施術所と保険者の事務の効率化、審査の質を上げて基準を全国でそろえること、そして質の高い施術につなげることです。請求の通り道がオンラインに変わると同時に、審査の見え方も変わる、と理解しておくのが正しい入り方です。
うちの院でいつから関係するか
いちばん知りたい開始時期からです。2026年6月時点で、義務化される時期は決まっていません。厚生労働省のワーキング・グループは令和7年3月の中間とりまとめで、当初の令和8年度(2026年度)の稼働目標について、次のように書いています。
つまり、2026年度に始まる予定が一度白紙に戻り、新しい時期はこれから決める、という段階です。直近のワーキング・グループは令和7年(2025年)9月の第11回で、その後に開始日が確定したという発表は出ていません。今は慌てて設備を入れる時期ではなく、いつ来ても動けるよう情報の窓口を持っておく時期だ、と押さえておきます。
決まったことと、まだ決まっていないこと
この話がわかりにくいのは、「やる」ことは決まっているのに「いつ・どうやって」が決まっていないからです。確定と未定を分けて見れば、慌てる場面とそうでない場面が分かれます。
| 項目 | 現状(2026年6月) |
|---|---|
| 請求をオンラインに一本化する方向 | 確定 紙・DVD・USBは将来廃止 |
| 審査のコンピュータ化・不正点検の強化 | 確定 多部位・長期・頻回などを点検 |
| 受領委任の仕組みそのもの | 維持 関係法令は改正せず現行を維持 |
| いつ義務化されるか(稼働時期) | 未定 当初の令和8年度目標は見直し |
| 請求システムの通信方式・最終仕様 | 未定 技術的に検討中 |
| 署名・受領委任の電子的なやり方 | 未定 都度委任の方向で検討中 |
| 導入費用を誰がどこまで負担するか | 未定 今後あらためて議論 |
出典: 厚生労働省「柔道整復療養費のオンライン請求導入等について(中間とりまとめ)」令和7年3月12日(2026年6月4日確認)。
なぜネットやAIの「2024年から」が当てにならないか
検索で出てくる年月も、AIに聞いた答えも、書かれた時点の古い目標や、医科のオンライン資格確認の話と混ざっていることがよくあります。試しに生成AIへ同じ質問をすると「2024年6月から義務化」「2023年から段階導入」といった答えが返りますが、柔道整復の療養費については、どちらも正しくありません。
正確な出どころは一つです。厚生労働省の「柔道整復療養費のオンライン請求導入等に関するワーキング・グループ」が出す資料です。開始時期や仕様の判断は、所属する団体やレセコンの販売店からの伝聞ではなく、この一次情報で確かめます。販売の現場では「義務化が近い」という言葉が出やすいので、年月の根拠がどこにあるかを必ず確認します。
最終的にそろえることになるもの
最終仕様は固まっていませんが、検討の方向から逆算すれば、いずれ必要になるものはおおよそ見えます。今すぐ買うためではなく、買い替えを判断するための材料として持っておきます。
- オンライン請求に対応したレセコン。今の請求ソフトが対応するか、買い替えが要るかが分かれ目です。販売元に対応予定と費用を確認しておきます。
- オンライン資格確認の環境。受領委任を扱う施術所には、資格確認限定型のオンライン資格確認が原則として義務づけられています。紙の署名に代わる電子的な受領委任も、ここに関わってきます。
- 安全な通信回線。IP-VPNやインターネット回線などが検討されています。専用線の契約をどうするかは、仕様が固まってからで間に合います。
今やること、まだやらなくていいこと
制度の全体像より、自分の院の手元に落とすほうが先です。今やることと、まだやらないことを分けます。
今やる
- 使っているレセコンの販売元に「オンライン請求に対応する予定か、費用はいくらか」を一度聞いておく。
- オンライン資格確認の導入状況を点検する。未導入なら、別の理由でも早めに進める。
- 明細書をまだ渡していないなら、発行を始める。
- 保険に偏った請求があるなら、自費メニューへの組み替えを今から考え始める。
まだやらない
- 「義務化前の駆け込み」をうたう専用機器の即決購入。
- 開始日を前提にした設備投資の前倒し。
- 通信回線の専用契約。方式がまだ確定していません。
- 不確かな開始時期に合わせた人員や店舗の計画固定。
開始日も最終仕様も決まっていません。今は設備投資を急ぐ場面ではありません。いつ来ても動けるよう、情報の窓口を一つ確保しておけば足ります。審査がコンピュータ化される方向だけは確定しているので、保険に偏った請求を続けてきた院ほど、ここで施術の中身と請求のあり方を見直しておく値打ちがあります。
よくある質問
出典
- 厚生労働省「柔道整復療養費のオンライン請求導入等について(中間とりまとめ)」令和7年3月12日 mhlw.go.jp/content/12601000/001467878.pdf (2026年6月4日確認)
- 厚生労働省「柔道整復療養費のオンライン請求導入等に関するワーキング・グループ」開催状況(第11回 令和7年9月19日) mhlw.go.jp/stf/shingi/hoken_system_wg_00003.html (2026年6月4日確認)
本記事は制度の検討段階の情報をまとめたものです。最終的な制度内容を保証するものではありません。請求実務の判断は、必ず厚生労働省の最新の発表と、所属団体・保険者の案内で再確認してください。